時代とともに変わる敵
ぼくらは、あの頃戦っていた。
家族が寝静まった、深夜の居間で。
仕事から、買い物から、帰ってくるまでの間に。
裕福だった者は、自室で。
深く、深く潜った先で突然相対する。
あるものは華麗に避け
あるものは恥を捨て、救助を求める旗を振った。
泥沼の戦いを経験した者もいるだろう。
時代は変わり。
主戦場はその右手、あるいは左手の
液晶に成り代わった。
彼らはそっと息を潜めている。
上から、下から、あるいははじめからそこに。
連携すらも覚え、幾重に重なり。
恐怖としての存在は希薄になり
なぜか時には有益ですらある。
遥か昔はどうであったのか?
未来の姿はどうなるのか?
我々は伝え合わない。
ただ、確かなシンパシーを感じている。
同じ敵と戦った記憶を。